1.1.1.階乗

$\newcommand{\lnl}{\\[8pt]}$ $\newcommand{\Lnl}{\\[18pt]}$ $\newcommand{\delt}{\mathrm{d}}$ $\newcommand{\comb}{\mathrm{C}}$ $\DeclareMathOperator*{\ssum}{\Sigma}$ $\DeclareMathOperator*{\sprod}{\Pi}$

階乗の定義

相異なる$n$個の物を順番に並べたとき,並べ方の総数を階乗(factorial)といいます.またこの総数を$n!$と表します.

階乗の計算

相異なる$n$個の物を順番に並べる総数はどう考えればいいのでしょうか.
まずは簡単のために$n=3$個の物を考えることにします. $3$個の物を区別できるよう,〇☆△とします.

全ての並べ方を書き下してみると,

  1. 〇☆△
  2. 〇△☆
  3. ☆〇△
  4. ☆△〇
  5. △〇☆
  6. △☆〇

の$6$通りになりますね.

毎回すべて書き出して数えるわけにはいかないので,計算で求められないか考えてみましょう.

まず, $1$番目は〇でも☆でも△でもいいので$3$通りですね.
$2$番目の物は$1$番目の文字で使ったものはもう使えません.ですので残り$2$個から選ぶことになりますので$2$通りです.
$3$番目の物は余った物を選ぶしかありません.$1$通りです.

ですので,総数としては$3\times 2 \times 1 = 6$通りとなるのです.

物が$n$個の場合でも同じように考えれば,

\begin{align}
n! = n \times (n-1) \times (n-2) \times \cdots \times 2 \times 1
\end{align}

となることがわかります.

$n$から$1$まで全ての数を掛け算するので覚えやすいですね.覚えやすいですが大きな数になりがちなので実際に計算する際は気を付けましょう.

具体的な階乗の値を求める

計算に慣れるために,$1!$から$10!$までの階乗の計算をしてみましょう.なお,掛け算の記号$\times$は長くなってしまうので$\cdot$を用います.

\begin{align}
1! &= 1\\
2! &= 2\cdot 1 = 2\\
3! &= 3\cdot 2\cdot 1 = 6\\
4! &= 4\cdot 3\cdot 2\cdot 1 = 24\\
5! &= 5\cdot 4\cdot 3 \cdot 2\cdot 1 = 120\\
6! &= 6 \cdot 5\cdot 4\cdot 3 \cdot 2\cdot 1 = 720\\
7! &= 7 \cdot 6 \cdot 5\cdot 4\cdot 3 \cdot 2\cdot 1 = 5040\\
8! &= 8 \cdot 7 \cdot 6 \cdot 5\cdot 4\cdot 3 \cdot 2\cdot 1 = 40320\\
9! &= 9 \cdot 8 \cdot 7 \cdot 6 \cdot 5\cdot 4\cdot 3 \cdot 2\cdot 1 = 362880\\
10! &= 10 \cdot 9 \cdot 8 \cdot 7 \cdot 6 \cdot 5\cdot 4\cdot 3 \cdot 2\cdot 1 = 3628800
\end{align}

まさに階段みたいですね.

上記を見ていればわかると思いますが,次の重要な性質が成り立ちますので覚えておいてください.

\begin{align}
(n+1)! = (n+1) \cdot n!
\end{align}

これは,$9!$がわかっていれば$10!$を求めるのに$1$から全てかける必要はなく,$9!$に$10$をかければ$10!$が求められるということです.

0!も定義されています

$0!$というのも考えることができます.これは掛け算を繰り返し行って求めるという考え方だと定義ができそうもなく,直感に反すると思いますが,

\begin{align}
0! = 1
\end{align}

と定義されています.最初は覚えるしかないですが, この定義でよかったと思える日が来るはずです.
すでに$1! = 1 \times 0! = 1 \times 1 = 1$と表せるので恩恵に少し預かることができました.でも同じように考えてマイナスの数の階乗を定義しようとしてはいけませんよ.

まとめ

階乗とは, 相異なる$n$個の物を並べた場合の並べた方の総数であり, $n!$で表す.

\begin{align}
n! = n \cdot (n-1) \cdots 2 \cdot 1
\end{align}

階乗の性質
\begin{align}
(n+1)! &= (n+1) \cdot n!\\
0! &= 1
\end{align}