ex5.2.3 ベルヌーイ分布の完備でない十分統計量と完備な十分統計量

はじめに

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$\newcommand{\lnl}{\\[8pt]}$ $\newcommand{\Lnl}{\\[18pt]}$ $\newcommand{\delt}{\mathrm{d}}$ $\newcommand{\comb}{\mathrm{C}}$ $\DeclareMathOperator*{\ssum}{\Sigma}$ $\DeclareMathOperator*{\sprod}{\Pi}$

ex5.2.3

ベルヌーイ分布のパラメータ$p$の十分統計量$T$が完備であるとは, すべての$p$で$E_p(r(T)) = 0$ならば, 常に$P(r(T)=0)= 1$が成り立つことをいう.

つまり, $T$が完備でないということは, $P(r(T)=0)=1$ではない$r(T)$が存在し, 全ての$p$で$E_p(r(T)) = 0$となる場合をいう.

$T_1$が完備十分統計量でないことの証明

$r(T_1) = r(X_1 – X_2) = \alpha(X_1 – X_2)$とする.ここで$\alpha$は$0$でない実数.

このとき,

\begin{align}
E_p(r(T_1)) = E(\alpha(X_1 – X_2)) = \alpha(p-p) = 0
\end{align}

となる. つまり全ての$p$で$E_p(r(T_1))=0$となる$P(r(T_1) = 0)\ne 1$である$r(T_1)$が存在するため, $T_1$は完備ではない.

$T$が完備十分統計量であることの証明

$T=\displaystyle \sum_{i=1}^n X_i$が十分統計量であることは(ex5.2.1(i))で$m=1$とすればすぐにわかる.
ここでは完備であることを示す. $T\sim \mathrm{B}(n,p)$より,

\begin{align}
E_p(r(T)) = \sum_{t=0}^n r(t)\cdot \underline{\binom{n}{t} p^t (1-p)^{n-t}}
\end{align}

下線部は常に正なので,$E_p(r(T))$が$p$によらずに$0$となるためには, 全ての$t$で$r(t)=0$となることが必要.よって$T$は完備十分統計量である.