第6章 ゼミナール4.1(p121 解答:p180)

記事の目的

明解演習 数理統計の勉強をしながら気づいた点を書いていきます。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

明解演習数理統計 [ 小寺平治 ]
価格:2592円(税込、送料無料) (2018/4/3時点)


他の問題に関する記事はこちらから。
スマートフォンでの閲覧では数式が画面からはみ出る場合があります。必要に応じてPCモード等にしてご覧ください。

スポンサーリンク


$\newcommand{\lnl}{\\[8pt]}$ $\newcommand{\Lnl}{\\[18pt]}$ $\newcommand{\delt}{\mathrm{d}}$ $\newcommand{\comb}{\mathrm{C}}$ $\DeclareMathOperator*{\ssum}{\Sigma}$ $\DeclareMathOperator*{\sprod}{\Pi}$

第6章 ゼミナール4.1(p121 解答:p180)

解答の不親切さ

この問題は驚くべきことに、解答が解答になっていないです。
問題:$ U^2=\frac{1}{n-1}\displaystyle \sum_{i=1}^n(X_i-\bar{X})^2 $ は $ \sigma^2 $の有効推定量であるか
解答:「XXXXX」より題意の通り。

Yes or Noで答えるべき質問に「あなたの言うとおりです」って返しているようなものです。意味が分かりません。
さらに、「XXXXX」の部分にも$ V(U^2)=\frac{2}{n-1}\sigma^\textcolor{red}{2} $という誤植があります。
(本当は$ V(U^2)=\frac{2}{n-1}\sigma^\textcolor{blue}{4} $)
$ V(U^2) $の導出を含めて解答を作ります。

解答例

第4章のゼミナール14.1 (1)の結果を利用します。

\begin{align}
\frac{nS^2}{\sigma^2} = \frac{1}{\sigma^2}\sum_{i=1}^n(X_i-\bar{X})^2
\end{align}

は自由度$ n-1 $の$ \chi^2 $分布に従う

これを使うと、$ V(U^2) $を簡単に求めることができます。

\begin{align}
U^2 = \frac{\sigma^2}{n-1}\left( \frac{nS^2}{\sigma^2} \right)
\end{align}

と書けることから、

\begin{align*}
V(U^2) &= V\left[\frac{\sigma^2}{n-1}\left( \frac{nS^2}{\sigma^2} \right)\right] \\
&= \left(\frac{\sigma^2}{n-1}\right)^2 V\left( \frac{nS^2}{\sigma^2} \right) \\
&= \left(\frac{\sigma^2}{n-1}\right)^2 2(n-1) \\
&= \frac{2}{n-1}\sigma^4
\end{align*}

(途中で$ \chi^2(n) $に従う確率変数の分散は$ 2n $であることを利用した)
これは、クラメール・ラオの不等式の等号を満たさないため、$ U^2 $は有効推定量ではありません。答えはNoです。
(クラメール・ラオの不等式の右辺の計算はテキストの例題4をご覧ください)