目次
はじめに
「入門・演習 数理統計」の演習問題の自作解答を紹介します。
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$\newcommand{\lnl}{\\[8pt]}$ $\newcommand{\Lnl}{\\[18pt]}$ $\newcommand{\delt}{\mathrm{d}}$ $\newcommand{\comb}{\mathrm{C}}$ $\DeclareMathOperator*{\ssum}{\Sigma}$ $\DeclareMathOperator*{\sprod}{\Pi}$
ex6.B.4
与えられた式が$\theta$の不偏推定量であることの証明
$g(X_1-p)$の取りうる値を$p$の値により場合分けする.
下図のように,$p$の長さによって$g(X_1-p)$の取りうる値は変わってくる.
緑のように$p$が十分長い場合は$g(X_1-p) = g(\theta)-1 , g(\theta)$となり,青のように$p$が十分短い場合は$g(X_1-p)=g(\theta), g(\theta)+1$となる.
緑のようになる条件は,$X_1$の下限,つまり$\theta$のときに$X_1-p$が$g(\theta)$以下となること,つまり$\theta -p \le g(\theta)$となることである.青のようになる条件は$\theta – p > g(\theta)$となることである.
(i)$\theta -p \le g(\theta)$のとき(緑)
$g(X_1-p) = g(X_1)-1$となる確率を考える.下の図のように,$\theta -p < X_1 -p \le g(\theta)$のとき$g(X_1-p)=g(\theta)-1$となり, $g(\theta) < X_1 – p < \theta+ 1 – p$のとき,$g(X_1-p) = g(\theta)$となる.
$X_1$が幅$1$の一様分布に従うことを考えると,区間の長さが確率そのものとなる.つまり,
&P\big(g(X_1-p) = g(\theta) – 1\big) = g(\theta) – \theta + p\\
&P\big(g(X_1-p) = g(\theta) \big) = \theta + 1 – p – g(\theta)
\end{align}
である.$g(X_1-p)$の期待値は,$g(\theta)$を単に$g$と表記すると,
E\big(g(X_1-p)\big) &= (g – 1)\cdot (g – \theta + p) + g\cdot (\theta + 1 – p – g)\\
&= \theta – p
\end{align}
従って,
E\big[ g(X_1-p) + p \big] = \theta – p + p = \theta
\end{align}
となり, $\theta$の不偏推定量であることがわかる.
(ii)$\theta -p > g(\theta)$のとき(青)
(i)と同様に考えれば,
&P\big(g(X_1-p) = g(\theta)\big) = g(\theta) – \theta + p+1\\
&P\big(g(X_1-p) = g(\theta)+1 \big) = \theta – p – g(\theta)
\end{align}
であるので,$g(X_1-p)$の期待値は,$g(\theta)$を単に$g$と表記すると,
E\big(g(X_1-p)\big) &= g\cdot (g – \theta + p+1) + (g+1)\cdot (\theta – p – g)\\
&= \theta – p
\end{align}
となる.従って,
E\big[ g(X_1-p) + p \big] = \theta – p + p = \theta
\end{align}
となり, このときも$\theta$の不偏推定量であることがわかる.
$\theta$の一様最小分散不偏推定量(UMVUE)が存在しないことの証明
ある$\theta$を固定したとき, $p$をうまく選ぶことで $\theta + 1 – p$を整数とすることができる.この整数を$N=\theta + 1 – p$とする.
$X_1-p$の値域は$(\theta – p , \theta + 1 – p) = (N-1,N)$となるので,$g(X_1-p)=N-1$である.つまり,
g(X_1-p) + p = N-1 + p = \theta + 1 – p -1 + p = \theta
\end{align}
となるので,$g(X_1-p)+p$は定数$\theta$になる.
従って,この$p$のとき
V\big[g(X_1-p)+p\big] = V(\theta) = 0
\end{align}
となり分散は$0$となる.ただし,この推定量は$\theta$に依存するためUMVUEではない.($p$は$\theta$に合わせてうまく選んだことに注意)
一方,UMVUEが存在するのであれば, その分散はいかなる$\theta$に対しても$0$でなくてはならない.明らかにそのような推定量は存在しないので, 題意が示された.